【Catfish】アメリカの人気ネット恋愛リアリティ番組
Catfish MTVチャンネル
「Catfish」を辞書で調べると、日本語では「ナマズ」と出るが、
スラングで「(恋愛面で)人を騙す」という意味で使われている。
何故「Catfish」=「人を騙す」のかは過去に放映された映画からだそう。(気になる人は調べてみてね)
MTVで放送されている『Catfish』はネットで知り合った相手が「なりすまし=Catfish」でないかをメインキャストのニーヴとケミーの2人が調査をするという番組。
日本番組「世界まる見え」でも過去に紹介されたこともあるアメリカの大人気番組である。
Catfishに依頼をする人たち
番組に依頼するきっかけは、主にSNS(恋愛アプリからFacebookなど)で知り合った相手と「恋愛関係」になり、数か月から数年にかけてチャットや電話連絡などを取り合っているが、実際に「顔出し」(ビデオチャットや会うこと)は断られ続けている状況に相手がCatfishなのではないか、と疑い始め2人に依頼をする。
依頼主から相手との馴れ初めを聞くと、「電話が壊れた」、「忙しい」などの理由をつけてはビデオチャットを断られ続けたり、実際に会う約束をして、長時間の移動や飛行機で会いにいったのにもかかわらず突然連絡が取れなくなり、ドタキャン。後日会えなかった適当な理由をつけたり、何事もなかったかのように関係を取り続けようとしてくる。これを聞いただけでも怪しいうえに「大きな裏切り」でありがながらも、依頼主は相手が「Catfish」ではなく、これを機会に対面を叶え、二人の関係のStep Upを望んでいるのだ。
これを聞くと、なんと依頼主は可哀そうなのだろうかと同情したくなるが、必ずしも依頼主が被害者とは限らないのがこの番組の面白いところ。
恋愛リアリティというよりも推理番組?
Catfishの疑惑をかけられた相手を特定するため、2人は依頼主から相手の情報(名前、写真、SNSアカウント、電話番号)をもとに調査をする。
調べてみると、有名インスタグラマーやモデルのアカウント、または友人の写真を無断で使用した偽アカウントであることが判明することが多い。
少ない情報からCatfishと思われるアカウントを特定し、Catfishの友人や依頼主の周囲の人間とコンタクトを取っていくなかで新たな事実が明らかになっていく。
最後にCatfish本人に嘘の証拠を突きつけ、正体を暴くことになる。(Catfishの登場シーンはいつもハラハラさせられる。)
調査する2人が情報収集のためコンタクトを取っていく人物のなかに実は「Catfish」が隠れていることがある。その人物の「嘘」を見抜き、誰が「Catfish」かを推理するのもこの番組の魅力である。
Catfishingする人たち
Catfishingをする理由はさまざまだが、大きく分けて3つある。
- 自分の容姿に自信がない
- 依頼主への復讐
- 詐欺
容姿に自信がないCatfish
この理由を持つCatfishは女性が多い。現実で恋愛ができない故に、複数の偽アカウントを所持し、同時に何人もの相手にCatfishingをしている常習犯が少なくない。
過去の放送で、2度Catfishingをした女性がいる。初回は自分の容姿に自信がなくため、友人もおらず、母親の介護の悩みのストレスから複数の偽アカウントを作り、Catfishをしてしまったと言ったが、2度目は、親友(幼馴染)と呼べる友人たちと共に登場し、1度目の彼女の言い訳が全て嘘だったことが明らかになったのだ。
復讐をするCatfish
「容姿に自信がない」の次に多い理由である。
依頼主が必ずしも被害者ではないというのがこの理由で、過去に依頼主からCatfishingをされた仕返しであったり、現在恋人や妻がいるのにも関わらず、SNSで別の相手と恋愛関係を築いている依頼主に恋人や妻が別人を装ってCatfishをするということもある。
嘘をついて人を騙すのはCatfishだけとは限らず、依頼主が自分の後ろめたいことを隠して嘘をつき、調査を錯乱させることがある。話がどんどん複雑になっていくので、推理ものを観ている気になってくる。
詐欺をするCatfish
俗にいう「ロマンス詐欺」である。大金ではないが、理由をつけて数万円程度の金額や物をコンスタントに請求してくる。送金先や送付先がバレているので調査を依頼しなくても自分から会いにいけば分かるのにと思うが、本当のことを知るのが怖いのか、依頼主は相手を信じて貢いでいる。
詐欺をするCatfishは依頼主に恨みもなく、恋愛感情もないことが多く。なかには男性が女性のふりをして騙していたこともある。一番依頼主が可哀そうなパターンである。Catfishは開き直って「(金銭の)強要はしていない」や「お金は全額返す」など謝罪もなく呆れるしかない。しかも、返すと言ってお金は戻ってこないという結末ばかりである。
謝らないの?許しちゃうの?
たまにこの番組を観ていて、『なぜCatfishはモザイクもなく堂々とカメラの前に出てこれるんだろう?』と思う。
日本では悪い側の人間は”モザイク”処理、さらには声まで変えてテレビに出てくることが多い。理由が「詐欺」ならなおさらだ。
考えられる理由の一つに「出演料」が挙げられるが、それよりも大きいのはCatfish自身「自分はそこまで悪くない」と思っている節があるのでないだろうか?
アメリカで生活をしていると、日本人は謝りすぎ、罪悪感を抱きすぎだと思ってしまう。反対にアメリカ人は本当に謝らないなと思う。
Catfishの弁明を聞いているといつも呆れ、腹立たしい気しか起きないのに、依頼主は相手をそこまで責めることもせず、許してしまうことが多い。(最後には握手やハグまでする)
キリストの「許す」教えを実行しているのか、Catfishの言い訳に同情しているのかは分からないが、日本人のわたしには到底理解できない。
アメリカでの実生活は届くものが届かない、連絡すると言われて連絡がこないなどの小さな「裏切り」に溢れている。そして、相手は謝らない。
広い心を持たないとここでの生活は最高に厳しい。
Catfishはショック療法
その小さな「裏切り」が起こるのは自分が日本人で英語が話せないからだと思っていたし、実際そういうところもある。
しかし、この番組を観ていると「裏切り」や「嘘」はアメリカ人でも英語を話せる人間にでも起こっている。
「Catfish」を通じて、アメリカには自分の理解を超える人間が日本の何倍、何百倍も存在することを学ぶ教育番組だと思う。
番組を進行する2人は毎回、Catfishや登場人物の差別的や暴言などの明らかに悪意のある発言にはきちんと非難しているが、相手の人間性を否定することは一切していない、というか悪い人に優しい。その人の住む世界や生きてきた環境が自分とは違うということを理解しているからだと思う。
『Catfish』は100%リアリティとは思わないが、楽しく衝撃的にアメリカのカルチャーが学べるおススメ番組だ。